この綾辻行人がすごい
この綾辻行人がすごい
こんにちは。私、慶應義塾體育會合氣道部一年の平井です。
過去の先輩がミステリについて書いておられたので、私もそれに倣うこととします。合氣道に微塵も関わらない話ですが、どうかご容赦ください。
最近、ようやく『時計館の殺人』の実写ドラマを見たこともあり、今回は綾辻行人という作家さんについて語らせていただきます。
とは言え、綾辻行人のような偉大な作家に対して批評家ぶれるほど、私は鉄面皮ではありません。ここでは、彼の作品について幾つか紹介させていただくに留めようと思います。これを機に、一つでも綾辻作品に触れてもらえれば、この上ない喜びです。
一作品目は、処女作『十角館の殺人』を取り上げます。クリスティの『そして誰もいなくなった』がオマージュ元ですが、そちらは読まなくても大丈夫です。
大分県の角島(架空の島)に建つ、十角形で構成された館『十角館』を舞台に、連続殺人が行われます。島の外では、死んだはずの人間から届いた謎の手紙にまつわる推理劇が同時に展開され、この二つの物語が、一つの解決に収束していきます。
『十角館』は、とにかくその結末の衝撃が凄まじいです。私が初めて読んだのは中学生の時で、帰りの電車の中でページを捲っていたのですが、最終章に辿り着いた時のあまりの興奮で電車を乗り過ごしてしまうほどでした。それ故、印象に残ったことを書くと大抵ネタバレになってしまいます。とにかく読んでほしいとしか言えません。
ちなみに、この作品は大分前にドラマ化されているのですが、出来がよかったです。『時計館』ともども、原作の雰囲気や展開をほぼ踏襲し、極めて再現度高く、小説を読んだ時の感動が味わえます。Hulu での独占配信なのが玉に瑕ですが、ミステリドラマが好きな方は、ぜひご覧になってください。
次は『水車館の殺人』です。『十角館』から続く館シリーズの二番目にあたります。
岡山県の山奥にある三連水車の館『水車館』を舞台とし、そこで過去繰り広げられた凄惨な連続殺人の描写、そして探偵の島田潔氏による事件の見直しが交互に行われます。
私を綾辻ミステリの世界に引き摺り込んだ元凶です。ザ・本格ミステリという出立ちで、かつ綾辻作品の雰囲気も如実に現れています。これもまた、先程以上に何も語れないのですが、最後の一文が海馬に焼き付くほどの衝撃がありました。
どうやら、『時計館』の次の実写化があるようなので、私は『水車館』の実写化を勝手に希望しておきます。
三つめは『霧越邸殺人事件』です。常に未来を暗示し続ける「館」、というオカルティックな舞台設定が見事です。その中で繰り広げられる見立て殺人(何かしらになぞらえられた殺人)もエキゾチックです。作品のそこかしこを彩る不気味さが、全てその神秘性を損なわないまま、ミステリとしてこの作品の成立を成り立たせています。
作品を通して、まるでマヨヒガに足を踏み入れてしまったような雰囲氣があります。しかもミステリ部分は精緻かつ論理的、私の嗜好ど真ん中でした。文庫本だと上下巻になるのですが、多分一気に読み終えてしまえると思います。
四番目は趣向を変え、短編集の『フリークス』を挙げます。どの作品も幻想的な色が強く、全て「記憶」をカギとしています。三つの短編はいずれも精神病棟を舞台に、主人公たちが「記憶の欠落」と向き合う形で物語が進んでいきます。ホラーっぽい雰囲気を醸し出していますが、そこまで怖くはありません。ミステリ的仕掛けは随所に見られますが、全てが白日の下に晒される興奮はあまり感じませんでした。むしろ何か異界を垣間見てしまったかのような、不思議な読後感です。
ホラー、ミステリというより奇譚と評すべきかもしれない、綾辻行人の特色が強く出ている作品だと思います。
最後に、『Another』というホラーを紹介したいと思います。これは知っている方も多いのではないでしょうか。こちらはミステリではなくホラーで、超常が全面的に出されています。しかし展開はミステリ的で、それが高い次元で作品と融和しています。あらすじを一言で語るのはかなり難しいですが、それでも無理やり一言にまとめるならば、ある中学校を襲う不条理の話、となるでしょうか。
アニメ化もされています。グロい描写が多く、メディアミックスに伴う改変も散見されますが、これはこれで面白いです。それと、ヒロインがかわいいです。
『時計館』の話をしようと思っていたのに、忘れていました。まあ、読んでみてください。アレについては本当に何も語れないです。ただ、どこもかしこも伏線だらけで、二周目三周目が本当に面白い作品だとは断言できます。綾辻作品は大体全部そうなのですが、時計館はその中でも秀でている部類の一つです。
最後に、たまたま合氣道に興味を抱き、その果てでこのコラムを目にしてしまった方へ。とりあえず『十角館』でも読んでみてください。『霧越邸』でも良いです。
あと、他の部員が合氣道の魅力について語ってくれると思うので、別のコラムにも目を通していただけると幸いです。





